フランクのライバルの派手なギャング役にいつもとは違う演技を見せたキューバ・グッディング Jr.。犯罪マネーのバブルに我を忘れてしまう純朴な弟役にはキウェテル・イジョフォー。そして憎憎しいまでの悪徳警官振りがかえって滑稽ですらあったジョシュ・ブローリンら、本来は主役級の役者がガッチリ脇を固めているのもいかにも豪華。まさに新旧演技派が集結し、統制のとれたアンサンブルを存分に楽しませてくれる。
さらに前述した各作品群でもそれぞれの世界……例えば『エイリアン』では広大な宇宙の辺境地帯の静寂と孤独を、『ブレードランナー』では大気汚染で酸性雨が降り注ぎ、世界中の人間で溢れかえる夢のない未来都市を、『ブラックレイン』では我々日本人すら驚く幻想的な大阪を、そして『グラディエーター』では息を飲むような壮大なローマ帝国の風景、『ブラックホーク・ダウン』では硝煙と血の匂いまで漂ってきそうなソマリアのあの日の戦場を、まさに観客がその場に居合わせて目撃しているかのような臨場感溢れる映像で魅せるリドリー・スコット監督。
今回も退廃と活気が入り混じるエネルギッシュな‘70年代のニューヨークの空気感に、ドップリと頭まで浸かってしまった気分。ふんだんに織り込まれる70’s黒人ポップス満載の音楽はどれをとってもカッコ良く、最近クルマを運転する時はipodにダウンロードしたサントラをいつも流しっぱなしである。
ただ後半、イザ主役2人の直接対決が始まってからの展開があまりにもバタバタと早過ぎたのはオドロキ。これは「実話がベース」だから仕方がないのかなぁ? と思っていたのだが、最近の監督のコメントでは“私の中でのフランク・ルーカスのキャラクターにあまりにも魅力を感じてしまったので、彼がただ転落して行くのを見るのは忍びなくて……ついラストを変えてしまったんだ”とか。
巨匠の思わぬ茶目っ気も垣間見えはするものの、とにかくあっという間、だけどオナカ一杯の、男の美学2時間37分。WEB COMMAND読者諸兄、心して観るべし!
1967年12月、東京都生まれ
銃器&映画ライター 銃器評論家 射撃選手 映画評論家
年に3〜4回は海外の試合や訓練に参加し、実銃射撃の経験
を積み重ねている[現役のs射撃手」でもある。銃に関してはカタログデータや資料
からの引用、列記のみによる頭でっかちな知ったかぶり原稿が許せず、“自分の肉眼
と身体で知りえた情報を書く!”が信条。