実在の人物に起こった実際の出来事だったからこそ観客にも伝わるリッチーとフランク、それぞれの信念とプライド、そして生き様と美学のぶつかりあいが、ドラマに極上のスリルを与えている。
誰かに使われる人生から脱け出そうと誓い、それまで誰も手をつけなかった新しい麻薬ビジネス・モデルを築き上げることで暗黒街のアメリカン・ドリームを達成していくフランク。
腐敗と汚職がはびこる警察内で自分だけは腐ったリンゴになるまいと踏ん張り、麻薬ルートの解明と、それ以上の巨悪に立ち向かっていくリッチー。
それぞれがぜったいに譲れない生き方のスタイルを持ち、また戦いが始まるのは恐らく不可避だったデカい男とデカい男の一騎打ち。そして、その先に待ち受けていた驚きの結末を、リドリー・スコット監督は、リアルに躍動的にダイナミックに描写している。
デビュー作の『デュエリスト/決闘者』から『エイリアン』、『ブレードランナー』、『テルマ&ルイーズ』、『ブラックレイン』。近作では『グラディエーター』、『ブラックホーク・ダウン』、『キングダム・オブ・ヘヴン』まで、ハリウッド史上最も多くの「闘い」を描き続けてきた名匠の真骨頂を発揮し、まさしく観る者にゾクゾクするような興奮を味わわせてくれた。
まるでウォール街の証券マンのように、ピンストライプのスーツを優雅に着こなすフランク・ルーカスのスマートなキレ者ぶりを、凄味とセクシーさ、そして時には暗黒街の人物とも思えぬ誠実なまなざしをたたえて演じるデンゼル・ワシントンがいつもながらに素晴らしい。
また、仕事は誠実にこなすがプライベートでは非常にだらしなく、弱い人間でもあった刑事、リッチー・ロバーツの人間味あふれる性格描写に、今回もラッセル・クロウがバツグンのうまさを見せる。