「自主制作映画」と聞くと、先ず頭に浮かぶのは低予算、というイメージだ。予算がないので本当はSFやアクション、エンタテインメントを撮りたいのに、最初から諦めてしまう。身近な題材で撮る、とか、ミュージックビデオ風に撮る、とかが、どうしても多くなる。それに各種映像コンテストもその多くは30秒、1分、といった「映画」というよりは「コマーシャル」の尺が規定される場合が多いそうなので、自主制作の製作本数じたいはフィルムの時代に較べて多くなっていると思うのだが“皆が見て楽しめる映画の作品”というのは本当に少ないと思う。じっさい、自主制作映画というものの多くは、撮った本人たちは喜べても観客として観るのはどうも……という、「内輪ウケ」の域から脱せない作品が多い。もちろん石井が高校生の時に撮った8mmなどはその典型であろう。
そんなわけで、この『キヲクドロボウ』の試写に初めて誘われた時も、正直、あまり乗り気ではなかった。非常に仲良くしている方から“どうしても!”と頼まれて、仕方なく付き合った、というのが本当のところだった。そして鑑賞後に思ったことは、
“この映画は劇場で観ないと! シネコンで上映されないと!”
本当に、心から驚いたのである。 制作費はたったの300万円だという。そして主要キャストはみなプロの俳優なのだそうだが製作者の心意気に触れてみなノーギャラで協力したのだという。CG400カット以上を駆使したという近未来の東京で繰り広げられる空中カーチェイスは斬新さ溢れるものだったが、かつてのSF傑作『ブレードランナー』やスパイ映画の王道『ミッション・インポッシブル』、『007シリーズ』へのオマージュと思われる映像や台詞も随所にちりばめられ、映画ファン、映画マニアほどニンマリできる趣向に舌を巻いた。
またガンアクションは掛け値なしに、「日本映画としては最高レベル」と太鼓判を押す。もちろん予算の関係でBIG SHOTやブロンコのようなプロップガン専任スタジオには発注できなかったと見え、銃は全て市販のエアソフトガンがそのまま出演。発射時の炎や煙、そして薬莢等は全てCGによる演出。しかし役者に妙な癖やコダワリがない分、武術指導、銃器指導の方々が教えた通りの素直な動き、構えができていて、嫌味がなかった。