
そんな三池監督が、スキヤキ・ウェスタン! と銘打って、日本で西部劇を製作! しかもかつてのマカロニのように本家アメリカ公開を見据え、全編台詞は英語! 今年のベネチア国際映画際のコンペ部門にも出品だそうだ。まさに世界照準!
ストーリーはまたもや「用心棒」パクリ風。 そうか、結局西部劇は日本の時代劇が源流で、ならばこれはリメイクやパロディではない。原点回帰、あるいは先祖帰り、なのだ。
そして時代劇の全ての作品は多かれ少なかれ、平家物語の影響を受けているそうだ。そもそも運動会で「赤組」「白組」に分かれるのも、ココに端を発している。まさに平家物語は日本人が戦いを考える時のルーツなのだ。そういや1年の締めくくりだって「紅白歌合戦」じゃないか。
ところで、銃器ファンの間でもウエスタン・スタイルはいまだ根強い人気である。トイガンのイベントに行けば必ず何かしらの出し物を行っていて、来場者を楽しませてくれる。顔はもちろん、正真正銘の日本人。ちょっと滑稽でほのぼのしいのだが、本人たちは真剣である。誰がなんと言おうと、ウエスタンがやりたいのである。 きっと三池監督もそうだったのだろう。だから「根畑(ネバダ)」とか「湯田(ユタ)」とそれっぽく地名を改変つつも、ロケ地は山形である。そしてどちらかというと用心棒に出てきた時代劇の宿場町、といった風景のオープンセットがすごい! さらに平家はスカジャン! 源氏は一昔前の暴走族風、といった、どう観ても化学繊維バリバリの衣装を着たギャングが闊歩し、それでいながらエモノはピースメイカー、ウィンチェスター、S&Wスコフィールド、ガトリングガンにクロスボゥ、そして日本刀。もう痛快としか言いようがない。
ともすればスター俳優を大勢使ったオトナの悪ふざけ、そう、イマドキのバラエティ番組のようになってしまうギリギリの線で映画は進むが、三池監督ならではの全編を貫くメッセージ「LOVE」の熱さと、松重豊、香川照之、塩見三省、田中要次ら、脇を固める実力派俳優の重厚さがそれをカバーしている。木村佳乃の体当たり演技も心に残る。
そしてラストをキリリと締める主題歌の素晴らしさに納得! ナント! マカロニ・ウエスタンの代表作のひとつ『続・荒野の用心棒』の主題歌「さすらいのジャンゴ」を編曲・日本語作詞した『ジャンゴ〜さすらい〜』を切々と謳い上げるのは、演歌の大御所・北島三郎! 恐れ入りました。CD買わなきゃ!
1967年12月、東京都生まれ
銃器&映画ライター 銃器評論家 射撃選手 映画評論家
年に3〜4回は海外の試合や訓練に参加し、実銃射撃の経験
を積み重ねている[現役のs射撃手」でもある。銃に関してはカタログデータや資料
からの引用、列記のみによる頭でっかちな知ったかぶり原稿が許せず、“自分の肉眼
と身体で知りえた情報を書く!”が信条。