まず主役であるF4の4人、それぞれのキャラが立っていること。誰一人完璧な人間はいず、むしろ一般人がなまじ超能力を得たために生活が一変してオロオロしている様子が面白い。
そして悪役が素晴らしい。野心と嫉妬心の塊でもある「Dr.ドゥーム」には前作の時から惹きつけられたし、今回から登場する銀河の謎の使者「シルバーサーファー」もユニークだ。このシルバーサーファーはアメコミファンの間でも特に人気の高いキャラクター。フルCGで創造されたキャラクターとはいえ、その能力とパワーの描写には度肝を抜かれる。「Mr.ファンタスティック」とは逆で、鳥肌が立つ程のカッコ良さなのだ。全米第1位への最大の貢献者は彼なのかもしれない。
そして最大の魅力は、家族やチームの「絆」を徹底的に描いている事。それを保つのがいかに難しいか? しかしだからこそ尊く、そしてイザとなると「絆」は考えもしない大きな力を発揮する、という、人々の生活に密着した身近なテーマがどのシーンにも盛り込まれているからだと思う。
人間関係の悩みだけは、いかに超能力を持ったF4メンバーでも“パッと解決♪”というわけにはいかない。そもそもDr.ドゥームが宿敵に転じたのも人間関係のこじれであったのだし、シルバーサーファーもまた、その高潔な人間性ゆえに高い人気を誇っているのだ。
超能力者たちが目も眩むようなバトルを繰り広げるアクション娯楽SF大作である本作だが、われわれ観客は家庭や職場、そして学校での日々の悩みや苦しみを、このストーリーに投影させて鑑賞している。登場人物たちも同じ人間として悩み、苦しんだ挙句にその問題と向き合い、解決する。その姿に勇気付けられるからこそ、“ああ、面白かった!”と思うのではないだろうか?
最後にWEB COMMAND読者向けの注目点だが、ドイツでの「シルバーサーファー捕獲作戦」時に登場する近未来の米軍装備はナカナカ面白い。ピクセル柄の森林迷彩や、誘導ミサイルを搭載した特殊車両など、結構考証の跡が見て取れる。また、昨今「グアンタナモ刑務所」等の話題でやたらと引き合いに出され、国際的な非難を浴びている「非合法な尋問係」が登場するのも、時勢を反映している、と言えよう。
F4メンバーが乗り込み、大活躍する「ファンタスティックカー」のフロントグリルとシートに「DODGE(ダッジ)」のロゴとトレードマークが入っていたのには笑った。“F4のユニフォームにスポンサーのロゴを入れよう!” という台詞もあったりして、いやはや、つくづくアメリカ……な作品である。
1967年12月、東京都生まれ
銃器&映画ライター 銃器評論家 射撃選手 映画評論家
年に3〜4回は海外の試合や訓練に参加し、実銃射撃の経験
を積み重ねている[現役のs射撃手」でもある。銃に関してはカタログデータや資料
からの引用、列記のみによる頭でっかちな知ったかぶり原稿が許せず、“自分の肉眼
と身体で知りえた情報を書く!”が信条。