感染した人間を突然凶暴化させる“RAGE”ウィルスの感染発生から28週後。イギリスは人口の大半を失いながらも、ようやく全土を覆っていたウィルスの猛威が収まり、現在は米軍主導のNATO軍の厳重な監視の下、復興活動が始まっていた。
スペイン旅行中でウィルスの難を逃れたタミー(イモジェン・プーツ)とアンディ(マッキントッシュ・マグルトン)の姉弟は、人気もまばらなロンドン、ヒースロー空港に降り立つ。変わり果てた街の様子に愕然としながらも、父親のドン(ロバート・カーライル)と再会を果たし、喜ぶ家族。しかし、感染を逃れ生き延びてきたドンには、子どもたちに決して言えぬ秘密があった。
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ダニー・ボイル監督の前作『28日後…』は、従来ではその発生理由等が不明のままだった「ゾンビ」を、新種のウィルスによって凶暴化した感染者、という設定に置き換え、終末世界での恐怖のサバイバルを個人の視点からスリリングに描いて大ヒットした。
その続編にあたるこの『28週後…』は、前作の設定や世界観、テイストをそのまま受け継ぎながらも、登場人物はすべて一新。極限状況における個人や家族の有様をリアルに描くのはもちろん、今回は国家や軍隊、政治の決断や有り方についてもより深く踏み込み、救いのないドラマがさらにスケールアップして、息苦しいほどの緊迫感で展開する。
命からがら逃げ延びるうちに偶然出会った生存者同士が家族のような絆を育む、というパターンだった前作とは逆に、今回は仲むつまじかった普通の親子4人が辿る、不信と恐怖の切ない悲劇に、社会の、国家の、ひいては人類全ての運命を象徴させている。
世界的に感染が拡がっているHIVや、現在世界各国の政府が「最重要課題」に位置づけている鳥インフルエンザ問題等、核兵器やテロリズム以上の脅威としてその恐ろしさが年々クローズアップされている「ウィルス災害」殲滅の難しさと、究極の非常時における国家・社会の行動論理をも見事に描いている。
今回描かれるウィルス再発の発端が、二児の父でもある夫が、自分が助かるために見捨てざるを得なかった妻に許しを請うため、彼女がキャリアとは知らずに接触してしまった事だったのがあまりにも切ない。そして海外から帰国した生き残った英国人たちを保護する任務に従事していた国連軍(米軍を中心としたNATO軍)が、その対応の甘さからウィルスの拡散を許し、結局は感染者もろとも市民を全員虐殺し、ウィルスを封じ込めようとする非情な作戦を実施せざるを得なくなって、地獄の戦場と化すロンドン。