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『ボーン・アルティメイタム』

『ボーン・アルティメイタム』

ところで、私は2作目の『〜スプレマシー』を観ていない。これって第3作を観るには最悪のパターンである。通常ならば。ところがまったく不自由なく、『〜アルティメイタム』を楽しめてしまった。なぜか?
ハッキリ言おう。ボーン・シリーズは1、2、3、全部おんなじ話なのである!
 記憶を失った殺し屋=ジェイソン・ボーンの“自分探しの旅”を描くこのシリーズ。ヨーロッパを中心に世界各国の都市へと観客を誘い、そしてCIAが次々と送り込んでくる殺し屋と戦う。それだけ。もちろん背後の計画が<トレッドストーン>だったり<ブラックブライアー>だったり、ボーン殺害計画を指揮するCIA内部のいわゆるボスキャラが変わったりはするけれど、「ある都市に来る→調べ物をしていると敵が来る→これを撃退する→また次の都市に移動」というパターンは変わらない。


これって世界各地を転戦するF1グランプリや、K1の試合を観戦しているのと同じである。マニアックな人は全戦、全試合を観ないと気が済まないのだろうが、どこか1つの レース、どこか1つの試合を見るだけでも楽しめる。これと同じ事なのではないだろうか?


しかもCIAや彼らが送り込んでくる殺し屋相手に繰り広げられる戦いは、ルールなし、何でもありの究極の総合格闘技! このアクション・シーンの新鮮さとスケールの大きさ、時には目を覆うようなリアルさ、残酷さこそがジェイソン・ボーン・シリーズの真骨頂だろう。この『〜アルティメイタム』は徹底的にリアルな臨場感にこだわった前2作の志向をそのまま受け継ぎつつ、スピード感と迫力を極限まで追求している。


序盤はロンドン、中盤は中東のタンジール、終盤ではニューヨークと、いわば3つの「メインイベント」の他に、多彩なロケーションを生かした小さな見せ場=「小試合」も連打。この構成も非常にいい。9・11の悲劇に真正面から向き合った『ユナイテッド93』でアカデミー監督賞にノミネートされたポール・グリーングラス監督が手持ちカメラを駆使した独自の映像感覚にいっそう磨きをかけ、その戦いをまるでリングサイドで見ているかのように活写している。


とにかく余計なもんは一切捨ててアクションだけに絞ってみました、というそのシンプルさに度肝を抜かれてしまった。ものすごくお金の掛かった「ウルトラファイト」を観ている気分。もちろんどの戦いもまさしく手に汗握る展開で、スクリーンを凝視しすぎたせいか目が乾いてしょうがなかった。


ボーンがいつも使っている拳銃はSIG PROで、これは映画で主人公が使う銃としては少数派だと思う。それとなぜかモスクワで敵(とうぜんロシア人、ロシア軍)から取り上げる拳銃もP226かP220。さらにはCIAが送り込んでくる殺し屋はSIG552と、何やらSIGの銃ばかりが目立つのは気になった。たぶんこれはタイアップなのだろうと思う。


ちなみにSIG552はどうもマルイの電動ガンっぽかった。というのも実射シーンがなく(※撃つ場面はカットが変わって音だけだった)、そしてこれもマルイ製と思われるサイレンサー(ナイツタイプ!)を「逆ネジ」で取り付ける場面が出てきたからだ。 嬉しいような、ガッカリなような。





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石井健夫(イシイ タケオ) プロフィール

1967年12月、東京都生まれ
銃器&映画ライター 銃器評論家 射撃選手 映画評論家
年に3〜4回は海外の試合や訓練に参加し、実銃射撃の経験 を積み重ねている[現役のs射撃手」でもある。銃に関してはカタログデータや資料 からの引用、列記のみによる頭でっかちな知ったかぶり原稿が許せず、“自分の肉眼 と身体で知りえた情報を書く!”が信条。

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「ボーン・アルティメイタム」

STAFF
監督:ポール・グリーングラス
出演:マット・デイモン、ジュリア・スタイルズ、ジョアン・アレン、デヴィッド・ストラザーン、スコット・グレン、アルバート・フィニー
2007年/アメリカ映画/1時間55分
原作:ロバート・ラドラム『最後の暗殺者』(角川文庫刊)
原題:『THE BOURNE ULTIMATUM』
ユニバーサル映画/配給:東宝東和

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