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ビアンキカップへの道’89

ビアンキ カップへの道 89 No.09

ビアンキカップの詳細・序章はブログで公開しています。

【決着】

最終日

プレイトクリーンという念願の目標は達成された。
それは、あっけないほどに自分の上を通り過ぎていった。
いや、ほんとうは、自分の持っているエナジーのほとんどを使い果たしたのかもしれないが、気づけば「世紀の対決」は終わっていた。
残す戦いはバリケイドのみ。ここで大きく転ばなければ、1880点を超えることができる。
現在のぼくの実力から見て、1880点以上の得点を残せたならば、100%の力を出したと言い切れる。

“明日のバリケイドで10ドル賭けないか? 1番になったやつに、負けた2人が払うんだ。”
ぼくはイナバとテツヤを誘った。
バリケイドを撃つ力量は3人が同格で、練習中も勝ったり負けたりの繰り返しだった。
“10ドルか‥‥、いてえけど最後だからいっか〜”
とイナバは了解した。
“えっ!? 10ドル! 面白そうジャン。ここで稼がせてもらえれば、お土産もウンと買えていいぜ”
と、勝った気でいるテツヤ。
各シューターが、それぞれの3日目をむかえる。

過去に、ビアンキカップは4つのステージから構成されていると書いた。それぞれがどんな競技なのか多くの人が知っているだろうが、ここで、もう一度ふり返ってみたい。
こまかいルールではなく、各ステージ、競技の難しさや魅力を知ってもらいたいと思う。
まずプラクティコゥだ。
10、15、25、50ヤードの4カ所から、それぞれ12発ずつの計48発を撃つ。初心者には難しそうに感じられず、特に楽しくもなく、退屈な競技と映るようだが、実際に撃っている本人にしてみれば、
“退屈? ジョーダンじゃないぜ。プラクティコゥの恐ろしさは撃たなきゃわからねーつうの。これだから撃ったことのない口先シューターは信用できん!”
と、叫びたくなる。
4ポジション(距離)ごとに異なったタイミングでの射撃が要求されるため、それぞれを十二分に練習しておかないと、手も足も出せないのだ。
アメリカに渡り、練習を繰り返し、ケンが始めて出場した練習試合では、このプラクティコゥで4発もミスターゲット(的を外す)をしてしまったという、イヤ〜な思い出がある。それだけに、練習中にクリーンできたときは奮えた。

次はムービングターゲット。
こいつは、手の施しようがない強敵だ。泣こうがわめこうが、どうにもならない。
“ムーバーを撃って出した得点こそ、そのシューターのもつ実力である”
とイチローさんが言うように、この競技には「マグレ」はない。偶然によい点を出すことなど、あり得ないのだ。
したがって、ムーバーを撃った経験の無いものが、
“撃てます、撃てます。ガンを横に振りながらダットをあわせてトリガーを引くだけ。どうってことないでしょ?”
なんて言うのは、
“シューティングのことは何も知らないけど、デタラメだけはいっぱい言える無責任男で〜す”
と、白状しているようなものなのだ。
プラクティコゥやプレイトに対しては、「プローン」という強い味方がある。
バリケイドには「ギルモア流テクニック」で立ち向かうこともできる。
しかしムーバーには攻略法がない。ただただ、自分の腕を磨き、実力をつけ、集中力もふくめて達人の域まで達しないかぎり、決して倒せない強敵なのだ。
<ムーバーを制するものはビアンキを制する>
撃ち込むほどに、その言葉の意味が判る。

3つ目がフォウリングプレイト。
4つのステージの中で最も撃ちやすく、1989年大会では63人ものシューターがクリーンしている。
練習を続けていくと気づくが、この競技は距離が遠くなるほど難易度がさがる。10より15。15より20。そして20よりは25ヤードが撃ちやすい。
その理由だが、距離が5ヤード遠くなる毎に制限時間が1秒ずつ増えることと、「プローンテクニックの発展」という、攻略法が確立しているためだ。
もっとも、こう書くと、誰でもクリーンできそうに聞こえるが、決して嘗めて掛かれる相手ではない。
イチローさんが、ヤスが、そしてミッキーが1枚外した。
プレイトを撃ち倒すには正確なリズムと、無駄のない集中力が必要とされ、それらが欠けると外すことになる。
マスタークラスの、それもトップクラスのシューターになると、集中力でなく職人芸で撃つのだとイチローさんはいう。が、ぼくのような下層シューターは、それこそ、全身から炎を吹き出すくらいの集中力と、鉄でできたプレイトを溶かすほどの「気力」をひねり出さないと、決してプレイトは倒れてくれない。
プレイトクリーン(全48枚倒し)は、ビアンキカップに出場する日本人シューターの目標であり夢といえる。


揺れる中で

最後はバリケイド。
バリケイドというのは「遮蔽物」のことなので、本来、グラグラと揺れることはない。
電柱やポスト。大きなものでは自動車やビルディングもバリケイドの仲間に入る。
ところが、ビアンキカップのバリケイドときたらどうだ。コツン! と叩くと、しばらくの間はブルル〜ンと振動して止らない。そのため、バリケイドに触れたままガンを連射すると、ブルル〜ンの振動に負けて外すか、粘ったあげくにオーバータイムの餌食になる。
バリケイド対策として「ギルモア流テクニック」がある。ガン(バレル)とバリケイドを同時につかみ、振動を押さえこむという技だ。
このテクニックは元々、トップシューターのブライアン イーノスが考えだしたもので、バリケイドの両サイドからそのスタイルで撃ったのはギルモアが最初だった。
イチローGUN団の全シューターが「ギルモアテクニック」を学んでいた。
師匠のイチローさんは本家のギルモアを凌ぐほどの完成度を見せつけ、ヤスも毎回のように満点を出し、ヨーコもクリーン率を高めていた。
イナバや、練習量の少なかったテツヤもバリケイドは上手にこなし、失点を2〜4におさえ、時々はクリーンする‥‥というレベルにあった。
ぼくは、どういうわけか、バリケイドの左側から撃つときに限って「グルーピングが右上にずれる」という病気にかかり、解決できないままビアンキカップに突入していた‥‥。

“いいか、ケン。ミッキーのレンジとまったく同じように撃て。なにも考えるな。まったく同じだぞ!”
バリケイドに向かうぼくに対し、イチローさんはそうアドバイスしてくれた。バリケイドをクリーンし、41エックスで5位の成績を出したイチローさんの言葉は、何よりも心強かった。
運がよいことに太陽もサンサンと照っていてターゲットも見やすく、練習よりも距離は近いと感じた。
<よし、よし。最後のステージは完全にこっちのものだ。ていねいに、ていねいに撃つんだ>
ガンに弾をこめ、両手をバリケイドに軽く当てて横向きのターゲットを見つめた。
“スタンバーイ、レディ”
バルンッ!
元気よく回転し、正面を向いたターゲットの中に、X(エックス)、10点、8点の3つの円が出っ張ってみえた。
エイムポイントをつかんでガンをホルスターから抜き出し、左手でグリップを握った。
エイムポイントから離した右手は、そのまま前にずらしてバレルとバリケイドをガシッと固定する。
最初は、バリケイド右サイドからの射撃だ。
初弾を特に慎重に撃ち、残り5発を常識はずれに連射する。初弾は2.5秒。残りの5発を2秒で撃つわけだ。エアガンの世界では遅い部類に入るかもしれないが、実銃にとっては限界ともいえるスピードだった。
ビアンキカップは4つのステージで構成されているが、全てに共通している「基本」がある。それは、
「入魂の1発の6連射」
ということだ。
これは、過去に、イチローさんがビアンキカップの記事中で使った表現だが、言いえて妙。これ以外にない。

6個の穴が10点リングに開いた直後、バルンッ! とターゲットは横を向いた。
昨日、プレイトをクリーンできたことで気分は軽く、今回の試合で始めて落ち着いたシューティングができている。
続くバリケイド左側での射撃もラクに撃てた。
心に余裕があるのとないのとでは、これほど違うのかと、いまさらながらに驚かされる。
15ヤードも失敗なく、イチローさんが言った、
“ミッキーのレンジのように‥‥”
の意味も感じ取っていた。
チャップマン アカデミィのバリケイドはミッキーのレンジのバリケイドと比べて「コシ」が強い。そのため、撃った瞬間の跳ね返り(振動)は強烈だ。
しかし、その分、揺れは尾を引かず、練習中のバリケイドよりも、わずかに早く止まってくれるのだ。
あの、ミッキーのレンジで撃ったニクイはずのバリケイドが、今となっては無二の親友に思えてくる。
25ヤードまで退がるとターゲットが交換された。
ここからが本当の意味でのバリケイドとの勝負だ。10と15ヤードはウォーミングアップにすぎない。
ターゲットも一気に小さくなる。
バリケイドに軽く両手をあて、ターゲットがこちらを向く瞬間を待った。
パルン!
25ヤード離れると、ターゲットが振り向く音も小さかった。もしかしたら、その音も気のせいだったのかもしれない。
今までとまったく同じようにガンを抜き、構え、ターゲットのセンターを狙ってトリガーを引いた。7秒という時間を有効に使い、6発を10点リングに撃ちこんだ。
<よし、このままの調子で撃つんだ。いける! なにも心配はいらない、このままだぞ‥‥>
続く左側から撃つときは、ガンを持ちかえる必要がない分だけ余裕がある。より注意深く狙って撃つよう心がける。
恐れず、大胆に、そして繊細にトリガーを引く。
10から25ヤードまでの36発は練習以上に上手く撃てた。


油断と技術の狭間に

<このままいけばバリケイドをクリーンできる‥‥>
そんな考えがチラッとうかんだ。ラストの35ヤードを無事終えればいい。クリーンは狙える範囲にある。
最後の35ヤード。
25ヤードまでと同じ気持ちだった。不安も緊張もない。それどころか、逆に、自信さえ生まれ、バリケイドを撃ちこなす力が自分にはあるのだと、熱くなった。
最後の12発に挑む。
両手を開いた状態でバリケイドに軽く当て、35ヤード先の小さくなった横向きの的を観ていた。
ルン!
音はなく、それでいて勢いだけは失わない速さで、ビアンキ ターゲットが正面を向いた。
<しめたっ!!>
ぼくはニマッとした。35ヤード離れていても、X(エック)スリングが見てとれたのだ。
右手をエイムポイントに運び、スルッとガンを抜く‥‥
ぬ、抜けない!!!
はじめてのドロウミスだった。
0.5秒と遅れはしなかったはずだが、ケンの慢心さを後悔させ、未熟さを露呈させるには充分すぎた。
<あせるな!ここで撃ち急いだらおしまいだ。初弾をゆっくり撃つんだ!!>
35ヤードでの制限時間は8秒あり、0.5秒のロスがあっても冷静に対処できれば充分に闘えると知っていた。
初弾はじっくりと狙って10点に撃ちこんだ。
しかし2発目を右上5点に飛ばし、あわててダットを戻すあまりに3発目を左下の8点に向けて発射した。
パニックに襲われながらも、残りの3発は10点リング内に何とか戻すことができた。
<ヤレヤレ、またやってしまったか。いつになったら精神面での成長ができるんだろうか>
バリケイドの35ヤードの難しさは承知していたはずなのに、ぼくは浮かれて撃っていた。それで勝てると信じていた。自信があっての射撃ではなく、単なる過信でトリガーを引いていたのだ。

“バリケイドの本当の勝負は35ヤードにある”
今になって、イチローさんの言葉が胸に刺さる。
最後の左側からの6発は、グルーピングが右上に寄ることも忘れて真ん中を撃った。結果はよかった。
ターゲットが集められ、採点が終わると失点7だった。
思ったとおりの得点だ。
試合を終えた瞬間、疲れから座り込んでしまったが、同時に、決着をつけられたことの喜びが心地よかった。

to be continued


戻ります。
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