ビル街からDMR(M14の狙撃銃バージョン)で市民を次々と射殺し、火炎放射器やナパーム弾で焼き尽くすという、目を覆うような凄絶さ。この掃討作戦の凄まじい割にはあまり効果の上がらない様子などは、現在中東で実際に行なわれている対テロ戦闘を皮肉っているようにも感じられた。また、かつてボスニアやチェチェンで行なわれた市街地での市民を巻き込んだ戦闘はこんな感じだったのだろうか……と、暗澹たる気持ちにさせられた。
軍の暴虐ぶりに義憤を感じ、市民を護って脱出する側に加担する米軍スナイパーを演じているジェレミー・レナーは、『S.W.A.T.』でコリン・ファレルが演じた主人公のライバルにして宿敵を演じた俳優だが、彼のライフルの扱いは非常に手馴れた感じがして観ていて安心感があった。ビルの屋上で使っていたDMRにしても、脱出行の際に人々の活路を切り開くM4SOPMODにしても、いかにも軍隊で訓練を積んできた人間らしい動きで見事にさばいている。また、このM4SOPMODに取り付けられたナイトビジョンが、後半の緊張感を盛り上げるのに効果的に使われていた。
じつはラストシーンがとても意外で、もしかしたらこの監督や製作者たちの「国家」とか「組織」に対する根本的なスタンスがあそこで示されたのかもしれない。これを「救いのない結末」と見るか、「革命」と見るか。その判断は、是非劇場でご覧になって下して頂きたい。
ただし映像はもの凄くキョーレツ! その描き方にもホラー映画にありがちな冗談ぽさや過剰演出がなく、リアルに徹しているので、人によっては激しい不快感や嫌悪感を覚える可能性がある。観るか観ないか? はくれぐれも自己判断でお願いします。
1967年12月、東京都生まれ
銃器&映画ライター 銃器評論家 射撃選手 映画評論家
年に3〜4回は海外の試合や訓練に参加し、実銃射撃の経験
を積み重ねている[現役のs射撃手」でもある。銃に関してはカタログデータや資料
からの引用、列記のみによる頭でっかちな知ったかぶり原稿が許せず、“自分の肉眼
と身体で知りえた情報を書く!”が信条。