いつもは登場すれば“カッコいい!”と思ってしまうルガーP08も、この映画では決してヒーローの銃ではなく、弱いものいじめ、虐殺の道具としてしか描かれない。こうしたミリタリーの描き方が容赦なくリアルで残虐なので余計にファンタジーパートの緊張感、緊迫感が盛り上がるという趣向。現実の戦争に比べたら、地下迷宮の魔物なんぞは可愛いもの、という感じである。
夢見がちで空想好きなピュアな少女オフェリア。迷宮世界に夢中になりつつも、自分が置かれている現実をもしっかり把握し、理解している様子がなんとも健気で可哀相で、涙を誘う。彼女にはなんとか幸せになって欲しかったのだが……。結論はどっちとも取れると思うので、是非皆さん、劇場で感じて、考えて下さい。
皮肉な事に、第二次世界大戦でドイツとイタリアのファシスト政府は倒されたにも関わらず、スペインのフランコ政権は「反共の砦」として冷戦時代の西側には都合が良かったらしく、フランコ自身が死んだ1975年まで続いたという。そんな歴史を少し知っていると、このラストへの解釈もいっそう複雑になってくる。
1967年12月、東京都生まれ
銃器&映画ライター 銃器評論家 射撃選手 映画評論家
年に3〜4回は海外の試合や訓練に参加し、実銃射撃の経験
を積み重ねている[現役のs射撃手」でもある。銃に関してはカタログデータや資料
からの引用、列記のみによる頭でっかちな知ったかぶり原稿が許せず、“自分の肉眼
と身体で知りえた情報を書く!”が信条。