本作『ロケットマン!』は一見おバカであり得ないようなヒーローのビジュアルからは想像できないほどストーリーがしっかりしており、良くも悪くも「破綻していない」ところが意外だ。
1920年代のタイの農村風景や、ロケットマンが旅する大自然の景観。その美しさ、見事さには時々ハッ! と驚いた。最近では観光地化しているイメージの強いタイなのだが、やはり国家や文化というのは、旅行パンフレットにあるようなステレオタイプのイメージではくくれないものだな、と改めて思う。
最強の悪役として登場するパンナー・リットグライは『マッハ!』のトニー・ジャーや本作のダン・チューポンにアクションを仕込み、また『7人のマッハ!!!!!!!』では監督もした彼らの「師」なのだという。クライマックスの師弟ムエタイ勝負は、膝蹴り、肘打ちなどのショートレンジ技が主体で、正直言って地味。
このように、辻褄が合っていないようで合っている(?)アクション。そして農業の機械化か? 伝統的な手法で続けるか? といった1920年代の空気感を反映した意外にも真面目でテーマ性のあるストーリー。さらに妖術や魔法、青春時代の恋愛、復讐劇、といった要素が散りばめられ、メチャクチャやってくれて大笑いできてスッキリ! という、「おバカ映画」を期待して行くと肩透かしを
食らうかもしれないのがこの『ロケットマン!』。しかし、鑑賞後の気分としては、“あ! 意外な拾い物だったかも♪”
1967年12月、東京都生まれ
銃器&映画ライター 銃器評論家 射撃選手 映画評論家
年に3〜4回は海外の試合や訓練に参加し、実銃射撃の経験
を積み重ねている[現役のs射撃手」でもある。銃に関してはカタログデータや資料
からの引用、列記のみによる頭でっかちな知ったかぶり原稿が許せず、“自分の肉眼
と身体で知りえた情報を書く!”が信条。